北風小僧の寒太郎

みんなのうた”で、お馴染みの寒太郎、近所に、30年前現れました。私と長男が

目撃しました。子どもではなく大人か、背の高い子どもか、はっきり、しません。

後ろ姿を見たのです。木枯し紋次郎の伊手達でした。寒太郎の歌が流行って

いましたから扮装は覚えています三度笠・合羽・振り分け荷物・刀。

初夏だったと思います。朝食を終えた7時過ぎ、外で洗濯物を干していました。

近くで、長男が虫取りして遊んでいました生垣の近くに物干し台がありました。

早く干し終えてこども園に行こう、今朝は当番だから、なんて思っていると

生垣の隙間から人影が見えたのです。とっさに、寒太郎だ!と声を上げました。

長男も気がついて、並んで見ていました。生垣の向こうは隣地で国道に隣接して

います。午前7時過ぎの国道は通勤の車が多いのですが、この時は1台も通らず

国道から、東へ登る町道の端の電話ボックスの所に寒太郎が立っているのです。

その坂道を上ると、中学校がありますが、登校中の生徒も、1人もいません。

今、存在しているのは、寒太郎と私と長男だけ?他は誰もいなくて、音もなくて

不思議な空間にいるようでした。すると寒太郎が坂道を登り始めたのです。

それが足で上るのではなく、脚は動かさず、立ったままエスカレーターに乗って

いるようでした。中学校までの坂道は25メートル位で、正面が中学校

右に曲がると県営住宅、左へ曲がるとこども園へ、寒太郎が何処に行ったのか

見えないので、わかりません。自宅からは、坂の途中までしか見えませんから。

その日は一日中、今朝の寒太郎の事だけを考えていました。あの場所で、

あの時間帯なら、他にも寒太郎に会った人がいるのでは? ところが何の

話も聞こえてきません。いつまでも、噂にも、なりません。時々思い出します。

息子に話すと、お化けとか、幽霊じゃあないの?と言います。怖くなかったよ!

いや、相手が怖がったんだよ。失礼な息子です。神様のイタズラね?と思います。

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